ゆったりした足取りで風呂から上がった朝青龍の第一声は「水くれ!」だった。「力が入った。重いね。とにかく先に先に攻めた」。179キロの巨漢を下した横綱に充実感が見えた。
立ち合いは万全ではなかった。低く踏み込んだが、把瑠都に命綱の右上手を許した。だが、ここで朝青龍は自らの頭を相手のわきの下に差し込む形で上手を切った。怪力ではかなわないが、体全体を使えば、対応できる。そんな思いが伝わる動きだ。
両差しになっても慌てはしない。「まわしを取らせずに攻めて勝ちたかった」。1分14秒かけてじっくりと真正面から寄って出た。復活優勝を飾った先場所は文字通り綱渡りの連続。結果的に勢いで勝っていた。だが、今場所は勝機が来るのを待つ心の我慢強さがある。
敗れた把瑠都はため息交じりに話した。「横綱は頭の中の切り替えが早い。もう少し、もうちょっとだったけど……」。好機をつかみながら、何もさせてもらえない悔しさがにじんだ。
10日目、朝青龍の相手は日馬富士。いよいよ千秋楽の白鵬戦へ向けて大関陣との対戦が始まる。「今までと一緒。変わらないよ」の言葉も余裕だ。
「東京では240キロを引っ張っている。山本山をイメージしてね。240キロだよ」。右手一本でトレーニングをするしぐさでニヤッと笑った。強くてふてぶてしさが戻った朝青龍が、後半戦も白星で走り出した。(竹園隆浩)
■千代大海7敗「まだいける」
千代大海にあとがなくなった。魁皇とは49回目の対戦。左のどわで攻めようとしたが、怪力の相手に組み止められてはどうしようもなかった。「(取り口 を)知り尽くしているのでうまくとられたな」と残念そう。それでも落ち込む様子はない。「あした誰? 結び? よし、やったろうか。まだいける。全然大丈 夫。おれ、(昨年夏場所など)負け越しても出たよね」。負ければカド番となる白鵬との対戦に向け、懸命に気持ちを奮い立たせようとしていた。